手の冷たい人はね、心があたたかいんだって






また春









が来たのはいいけれど




なんで!?

なんで





「僕はまたこんなトコに来てるんでしょう」

「それはな新八君。こんな仕事俺一人じゃ出来ないから」




机の上にはおびただしい量の折り紙



「すごいですね。こんな仕事受け持つなんて、流石です、いつでも捨て身ですね」

「あーあー言っとけ。でもな、誰かがこういう仕事をしないと、世界は成り立たないの。分かるかな」

「・・でもまあ、そう言いながら僕も自主的にお手伝いしに来てる訳ですけど」



おい、今の言い方ちょっと恩着せがましくていらっと来ちゃったよ銀さんとか何とか

ぶつぶつ言ってるとなにやら おくのほうから





「ぱーぱ・・」





「お、銀楽、おっきしたかあ」






この景色を見た僕は、軽く笑ってみせる

あれから数年、どっからどう見ても人間の親だ

いや、当たり前すぎて失礼だが

でも、銀さんは変わったのだ

どう変わったかって、そりゃもう見てわかる通り






「ぱぱああ、ぎんらくぱぱといっしょにあそびたい」

「銀楽ちゃん、お父さん今忙しいから、僕といっしょに遊ぼうか」

「・・ぎんらくぱぱがいいの・・」



それを聞いた父親は笑う


「そっか、そしたら新一でも呼んでみるかい?今家に居ると思うから・・」

「よしっ!そしたら銀楽、外に遊びにいくぞ!」

「よっしー!」

「え?よっしじゃないですよ、依頼はどうするんです明日の朝までなんでしょ?!」






それはいつも新ぱっつぁんがやってくれたじゃん

いつもってなんですか!


いつもだよ




万事屋で3人一緒にやってきたあの頃のようにさ








全く、あんたにだけは言われたくありませんと

僕はあの頃のように言葉を返す

それを背中に聞いたふたりはいつものように笑顔で



笑顔で












「パパ、ぎんらくね、おじさんにこれもらったんだ!!」


桜が有名な裏道を歩く事が、何故だか知らないが春限定の日課となる

でも・・去年は行けなかった
銀楽が隣の朋ちゃんを、暴言更に殴った。らしい


理由を聞くと・・・ゆうたくんをたたいたから

女の子は叩いちゃ駄目だろというと、声に出して泣いたのを覚えている
こっちが悪いのは判っているのに、何故か「えらい」と教えてしまった



やったらやりかえせ

これが全てに通ずる正しいものなのかどうかはあまり考えないようにしているが、
でもお前の事なら正しいんだろう


こういう考えが親の頭を方端にさせてゆく


つまりそうこれが親バカというものである。

・・じゃなくてまあ、それをこの世で一番愛してるわけだけど。








「銀ちゃん?」







「わ、何?どうした銀楽」







びっくりした、一瞬






「生きてた!だっていくら呼んでも固まってるんだもん」


くすくすと笑う
俺はちょっとばかし苦笑する





すると銀時はふと小さな手が支配する物に視点を置いた

銀楽が言うおじさん・・と云えば、奴だろう

小さな小梅の髪飾り




「一応アイツも人間だかんな、ありがとう言った?」

「言ったよ!そしたらね、ここにちゅってされた!!」

「ヅラぁ、あいつついに俺の子にも手ェ出しやがって」



そういってあははと笑う

春といっても寒いけど
そういえば銀楽は大丈夫だろうか




「銀楽、お前寒くないか?そんな薄着で」

「ちょっぴしさむいー」

「ばーか、また風邪ひくんだかんな」


またいたいいたいの注射されるんだから

銀時は小さな手を包みこんで会話を続ける

すると自分の言っていることに気が付いた

思い出したんだ









「そうなの?」

「ウン!マミーが言ってたヨ」

「そりゃ嘘だよ」

「む・・マミーが嘘つくわけないアル!」

「だって俺お前より優しいわけねーじゃーん」

「だから、わたしは暖かくなきゃだめなの」

「何・・意味わかんなくなってきた」





「わたしは、ぎんちゃんの心を溶かしにきたの」






風が強く吹いた。

7年前の春のように


この世にこんなにも守りたいものがあると知るあの日のように








「神楽」



「銀ちゃん」






神楽をとりもどすすべが今は 世に無い


夜が明けたり日がくれたりして

家の中は花にうずまり

何処かの葬式のようになり







いつのまにか神楽が居なくなる

















涙で床に水滴をこぼすと

あしもとにちいさなものがあった



無意識に抱きかかえると

きれいな顔がかすかに笑った





彼女の全てを手に入れ

彼女の全てを失った










悲しむ自分に、白く冷たい棺桶の中の彼女は手を差し伸べ

自分がもつ手袋の片方を唯一持つ手は


不思議と母親になっていた








「パパ、だいすきだよ」

「パパも、銀楽のことがこの世で一番好き」



銀時はそういって銀楽を背中におんぶして

いつかの夕暮れのように笑いあった










さくらの舞う春にでも

きっと会いにいくね

ぎんちゃんがわたしをみつけてくれたあの日から

あなたもおなじく年をとって

今よりもっとしわくちゃになって



そうしてここへ来た時は

わたしを愛してくれればいい










だから今は


この子をこの世で一番愛して









そしてもいっこどうせなら

わたしのわがまま聞いてヨ銀ちゃん






今度うまれてくるときも



あなたとこうやって手をつなぎたい





そしてまた運命みたいねって笑いあって

みつめあって

キスをして

あの夜のようにはじめて愛されることを知る






あなたときっと会えたら

特別なことなんかひとつもなくて


ただぎゅってしてくれる





優しくてだいすきな

あなたをまってる




だからねわたし


















「最近の神楽は詩人だな」


「違うヨ銀ちゃん、銀楽がそやって言ってるの」























夕暮れの公園


3人の家族が幸せそうに笑いあうのを

道端のかえるが今もそっと見守っている




















end

08.01.16