攘夷1
「そういやさあ」
血液で重くなった衣服を一枚脱ぎ
長髪の男に手渡す
「衣服くらい自分でなんとかしろ」
「昨日珍しいことあったんだよ」
桂は流れの遅い川の傍で
まるで世話焼きの母親のように手を動かしている
昨日は灰色と湿気の世界だったのに
今日は雲ひとつない爽やかな日
「で?」
「昨日斬った奴の中に親子がいた」
それを聞いた桂は溜息をついて笑った
それから銀時は空を仰ぎながら、今日は本当に天気が良いと呟いた
「お前にもポリシーがあるのだな」
「うっせーよヅラァ」
その時に初めて手をとめて
横目で銀時の寝転ぶ後姿を見た
たまに他人は今何を考えているか気になることがある
「銀時」
「あ?」
「今先生は、俺たちに何を一番伝えたいのだろうな」
「さあ。知らねーなあ」
それにあの先生、俺の事ばっか叱るもんだ
勝手に詮索すんのは末恐ろしいや
すると桂は軽く笑って、本当に昔から何も変わらない奴だと言った
「とりあえず俺は、キレイなねーちゃんとめいっぱい遊べる日が来るのを願うだけよ」
それだけだと言って笑う
本当にそれだけだ、今は
全身真っ白な鳥が青い空を飛んでいく
目で追うとそれはもう青色に飲み込まれていた
「そうだな」
そういえばそうだコイツは昔から
造り笑いだけは苦手だった
もう一度空を仰ぐ
決して届かぬ天をつかむように
あの親子にもう会うことはない
でも今もなお残るこの気持ちはなんだ
親子なんて言葉でしか知らないのに
自分を生んだ人間は、自分と同じことを考えた日があっただろうか
でもそれももうどうでもいい
登りつめたところに何があっただろう
途中で道をそれてしまった僕たちには
永遠にわからない
見たこともない景色が広がっていただろうか?
仲間と見る筈だった未来も?
わからない
だけど僕たちはそれと引き換えに
別の景色を手に入れたのだ
「銀さーん!なんと今日はお登瀬さんが焼肉につれてってくれるそうですよ!」
「早くしないと置いてくアルヨもじゃもじゃ」
まあとりあえず
事実がこれ以上どちらにも味方しないのなら
このままここにとどまって
夢の終わりをみとどけるのも
「良いもんだな」
雲から光が差す
08.4.6