秋
風の中ふたり
神楽と手をつないで
買い物へ
世界がわかわかしい緑で
青い雨が降ってきたので
そういえばあの戦場でも
気持ちは灰色でもこの世界は美しかったと
いや、でもまあ
路地裏でするキスほど
夢のあるものでもなかったか
「銀ちゃん、キスして・・?」
今?
「だって今したい気分なんだもん・・」
全く
誰にも思いつかないような
可愛いことを言うなよな
ちゅうってどこだよ
んじゃあ
「おっぱいでいい?」
「何がおっぱいでいい?アル。」
急に顔面に圧力、というか痛みが走って
あれ?さっきのはなんだよ
「・・・・あ。」
「・・何の夢見てたアルか。さてはボインのねーちゃんとあはんな事か!」
「あたりめーだ男のロマンなんだから。聖域なんだから」
「答えになってないアル」
もう昼なのに、なんでまだ寝てるの寝ぼすけ銀ちゃん。
とかなんとかぶつぶつ言っている俺の嫁・神楽。
上に跨った神楽と、目が合う
「で、何」
「ごはんアル!」
そういえば、なんかこげくさいな
長年コイツと一緒にいると、もう匂いで何を作ったか大体判断できる俺はやっぱすごい
で、予想ではズバリ餃子。
勿論沖田はわからないだろう
居間へ行くと、その匂いは更に確実なものになった
ピンクのエプロンを着た神楽が、皿をもってこっちへ来る
「あ、違った」
「いっぱい作ったから、いーっぱい食べるアル!」
「はいはい」
これが腹の大きい、可愛い神楽が心込めて作ったハンバーグだと思うと、その物体が可愛らしく思えてしまうのも、愛だろうか。
あ。でもやっぱにんにくくさい
半分くらい食べた後、神楽がぽつりと一言零す
「この子がマミーの手料理の中で何が一番おいしいかって聞いたら、
これの名前を挙げてくれるように」
腹に手を当てながら話す
俺にじゃなくて、その腹の中にいる俺たちの
「ならもっと、これからもいっぱい練習しないとな」
俺たちの大切な愛のかたちに
たとえ、人間同士でなくても
「銀ちゃん、わたしもう名前考えてるんだぁ」
「・・あら、銀楽じゃねーの?」
「銀楽は理想アル。だけど女の子だったら可哀想でしょ?」
「まーな、常にいじめっ子に人気だろうな。けどなんでいきなり」
「だって、伝えておかなきゃ」
伝えておかなきゃ
強くて弱いあなたが
そんな顔をする前に
会社から帰る電車にのって
家路へ
風は冷たくて
空もこんなに暗くて
今日は27だから、神楽ちゃんは昨日病院の日だったっけ
ちゃんとご飯食べてるのかなあ、まさかずっと卵かけご飯じゃないだろうな
・・でもまあそうだとしたら、ウチに電話かなんか連絡がくるよな。
電車の中でそんなことを考えていると、ふと気づくことがあった。
(やっぱお人よしは何年経っても変わらないのか・・)
そうして新八は、息子が生まれた夜を思い出してそっと目を細めた。
家はもうすぐだ。
今晩はハンバーグだろう。
もうすぐ7時半。
銀ちゃんは夕方から仕事。
編み物の本を手にとって、作りかけの部分からまたはじめていく
編み物は一ヶ月前からやりはじめた。
・・なんか本当は一週間くらいあれば出来るらしいんだけど、
わたしの場合はなんか、ちょっと手が込んでるから、遅いみたい。
なんでいきなり?それはなんか、やっぱり母親らしいからとか
自分でもよくわからない理由だ
だけどあったかいでしょ
女の子ならわかるはずだもん
テレビをつけると、子供向けのアニメがやっていた。
いつかこんなのを見て、
自分もこんなキャラみたいになりたい!とか言い出すのだろうか。
だけどそんなのはずっとずっと未来の話だし
今は編み物に集中しよう
銀ちゃんももうすぐで帰ってくるから
帰ってきたら、またいろんなお話をしよう
神楽はそうしてお茶を飲もうと椅子から立ち上がると
急に眩暈がして立っていられなくなった
周りを見渡すと
視界がぼんやりとして何も見えなかった
急な身体の変化に震えながら
急いで銀時に電話しようと思った
願いは叶わなくて
一向に良くなる兆しもない
だけどあの時何故か
結婚記念の写真がかけてある部分だけがはっきり見えたのだ
まるで何かを再認識させるように
今考えるとそんなのは幻想であったかもしれない
一部分だけ見えるなんてそんなのありえないから
だけどわたしはまだ見ていたかった
見続けていたかったんだ
人間とか宇宙人とかじゃなくて
更にもっと前の昔の話の話を思い出す
ひとは昔丸い球体で、そこには男女の区別がなかった。
もちろん宇宙人も。
あるとき、その球形が分かれて男女が出来た。
それ以来、ひとは自分のもう半分を探して、完全な球形に戻ろうとしてるんだと
だから銀ちゃん、わたしはそのもう半分の自分に出会えた、
とても幸運なケースだったのかもしれないんだ
だからねわたし今、すごくしあわせ。
どんなドラマや映画にも、私たちの脚本はできないよ
でもそんな話をしたら
あなたはすっごく怒るだろうなあ
そんなの神話にすぎないって怒鳴ってそして
私の顔にいっぱいキスをして泣くのかな
神楽は倒れた
意識が遠くなっていく中必死に銀時の名前を呼ぶ
『見続けていたかったんだよ』
ねえ
銀ちゃん
なんでまだこんなに涙が出るの
あの時もう出し切ったつもりだったのに
ああ
まだこんなに
銀ちゃんがすき
だから
ごめんね
07.11.29
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